主要8通貨(USD・EUR・GBP・JPY・CHF・AUD・CAD・NZD)について、各国の中央銀行・統計機関・CFTC(米商品先物取引委員会)が公表した情報をもとに、今週の材料を整理してみました。相場を当てにいく記事ではなく、「いまどんな材料があるのか」を並べて眺めるためのものです。数値は2026年10月4日(日本時間)に確認したものです。
今週のざっくりまとめ
- 強そうな通貨:ドル・豪ドル(金利が高い通貨)。ユーロも材料は強めですが、先週はいちばん売られました
- 弱そうな通貨:円・ポンド・フラン・カナダドル・NZドル
- 一番の山場:10/9(金)夜のカナダ雇用統計。その前に、10/8(木)未明にFOMC議事録(アメリカの中央銀行の会合の記録)が出ます
① 先週までの振り返り
先週いちばん大きかったのは、アメリカの「10月ももう一度利上げ」という見方が一気にしぼんだことです。9/30の物価の指標(PCE)が予想を下回り、10/1にはFRBのジェファーソン副議長が判断には時間がかかるかもしれないと話しました。週の初めは7割くらいあった10月の利上げの確率は、10/2には4分の1ほどまで下がったと報じられています(ロイター)。
10/2夜の米9月の雇用統計も弱い結果でした。働く人の増え方は2.9万人にとどまり、失業率は4.2%に上がっています(米労働統計局)。平均時給の伸びは前年比3.0%で、約5年4か月ぶりの低さですね。それでも米国の長期金利(10年債)は5.28%と、前の日より上がって週を終えました(米財務省)。
ドルが大きく売られたわけではなく、ほかの通貨のほうが弱かった1週間でした。ECB(ユーロ圏の中央銀行)の参照レートで比べると、ユーロはドルに対して1週間で1.6%ほど下がり、8通貨でいちばんの下げです。10/2に出たユーロ圏9月の物価は3.8%と、8月から大きく上がりました(Eurostat)。ただ、フランスの財政への不安がそれ以上に重く見られ、同じ日に安全な通貨のフランがユーロに対して急に買われています。
豪州の中央銀行(RBA)は9/29に金利を4.60%へ上げましたが、豪ドルは0.70を割り込みました。翌日の豪州8月の物価が予想を下回り、「11月にもう一度」という見方が弱まったためです。NZドルは、NZの中央銀行の総裁が10月は利上げしない考えをにじませたと報じられ、約10か月ぶりの安さになりました。カナダドルも、アメリカがカナダ製品の輸入を止めたことで約1年6か月ぶりの安さまで売られました。
ドル円は157〜158円台で、あまり動きませんでした。日銀短観では大企業の景気の感じ方が良くなりましたが、日銀が続けて利上げするのは難しいという見方が勝っています。当サイトの「買われる/売られる」の判定は、先週は1件も変えていません。
原油はホルムズ海峡(原油の通り道)の事実上の封鎖が続くなかで、WTI(アメリカの原油価格)は10/2に91ドル台でした。10/3にもタンカーへの攻撃が報じられていて、週明けの原油の動きは気にしておきたいところです。
② 今週の注目カレンダー(10/5〜10/11)
時刻はいずれも日本時間です。今週は、8つの中央銀行のどこも金利を決める会合がありません。
| 日程 | イベント | ここを見る |
|---|---|---|
| 10/6(火)21:30 | 米8月・カナダ8月の貿易収支(輸出と輸入の差) | カナダは、アメリカの輸入禁止の前にどれだけ影響が出ていたか |
| 10/6(火)23:45 | FRBのボウマン副議長の講演 | 金融政策に触れるかどうか |
| 10/7(水)9:30 | 豪8月の住宅着工許可(家を建てる許可の数) | 利上げのあとも住宅の勢いが続いているか |
| 10/8(木)3:00 | FOMC議事録(9/15〜16の会合の記録) | 3年ぶりの利上げのとき、「次もある」という意見がどれくらいあったか |
| 10/8(木) | ECBの議事要旨(9月の会合の記録) | 10月の利上げに前向きな意見がどれくらいあったか |
| 10/8(木)14:00 | 日本9月の景気ウォッチャー(街の景気の感じ方) | 日銀が利上げしやすい景気かどうか |
| 10/8(木)17:30 | FRBのウォラー理事の講演 | 10月の利上げについて何か言うか |
| 10/9(金)21:30 | カナダ9月の雇用統計 | 今週いちばんの山場。8月は4.2万人減。弱ければカナダ中銀の10月利上げの見方がしぼみそう |
| 10/9(金)23:00 | 米ミシガン大学の消費者の気持ち(10月速報) | 先々の物価がどれくらい上がると見ているか |
| 10/10(土)早朝 | CFTCの建玉報告(10/6時点) | ユーロ・ポンドの大きな売りが減るか |
10/12(月)は日本がスポーツの日、アメリカはコロンブスデー、カナダは感謝祭で、それぞれお休みです。
その先は、10/14(水)に米9月の消費者物価(CPI)、10/15(木)に豪州の雇用統計と英国8月のGDPがあります。10月末には、10/27〜28にFRB、10/28にカナダとNZの中央銀行・イギリスの予算発表、10/28〜29にECB、10/29〜30に日銀と、大きな予定が集まっていますね。
③ 通貨ペアごとの見通し
8通貨の材料は通貨ペア別 売られる要因・買われる要因にまとめてあり、火・水・木・金曜日はそちらを更新しています。この記事の表は、その10/2朝時点の内容に週末までの動きを足したものです。
8通貨の材料と優勢
右の列は、短期で売り買いする大口の投資家(CFTCの「投機筋」)の持ち方です。9/29時点(10/2公表)のデータを使っています。どちらかに大きく偏っていると、手放す動きが出たときに反対向きへ動きやすくなる点に注意です。
| 通貨 | 優勢 | 買われやすい理由 | 売られやすい理由 | 大口の投資家の持ち方 |
|---|---|---|---|---|
| USD | 買われる | FRBが3.75〜4.00%に利上げ。長期金利は5%台と高い | 10月の利上げは4分の1くらいの確率に。9月の雇用統計が弱かった | 少し買っている程度で、偏りは小さい |
| EUR | 買われる | ECBが6月・9月と利上げ(2.50%)。9月の物価は3.8%に上がった | フランスの財政不安。先週は8通貨でいちばん売られた | 売りがここ3年で見てもかなり多い。手放す動きが出ればユーロ高に振れるかも |
| GBP | 売られる | BOEで利上げに前向きな委員が増えている。11月の利上げを見込む声 | 30年債の金利が1998年以来の高さ。10/28の予算を前に財政への不安 | 売りが約3か月ぶりの多さで、3年で見てもかなり多い。手放す動きが出ればポンド高に振れるかも |
| JPY | 売られる | 日銀が1.25%に利上げ。日米の財務相が円安への懸念を確認 | アメリカとの金利の差が大きい。日銀は続けて利上げしにくいとの見方 | 円の買いを2週続けて減らした |
| CHF | 売られる | 何かあったときに買われやすい「安全な通貨」。10/2はユーロに対して急に買われた | 金利が0%で主要通貨の中で一番低い | 売りを3週続けて減らした |
| AUD | 買われる | 金利4.60%は8通貨で一番高い。8月の物価は4.0%に上がった | 物価が予想を下回り、11月の利上げの見方が弱まった。約12週ぶりの安さ | 投機筋の売りは約10か月ぶりの多さ。一方でヘッジファンドの買いは3年で見てかなり多い。見方が真っ二つ |
| CAD | 売られる | 物価は3%前後。カナダ中銀の10月利上げを予想する声もある | アメリカのカナダ製品の輸入禁止が発効。約1年6か月ぶりの安さ | 売りを1週で大きく増やした |
| NZD | 売られる | 7月・9月と続けて利上げ(2.75%) | 総裁が10月は据え置きをにじませた。約10か月ぶりの安さ | 売りを2週続けて増やした |
今週特に動きそうなペア
USD/CAD(ドルカナダ)
ひとことで:上がりやすい(ドルが強く、カナダドルが弱い)材料が多め。
なぜ? アメリカがカナダ製品の輸入を止めたことで、カナダの景気が弱るという心配が強まっているからです。カナダドルはドルに対して約1年6か月ぶりの安さになっています。
逆に動くとしたら? カナダ中銀が10月に利上げするという見方も残っています。10/9の雇用統計が予想より強ければ、その見方が勢いづいて、下がるかもしれません。
いつ決まりそう? 10/9(金)夜のカナダの雇用統計ですね。
GBP/USD(ポンドドル)
ひとことで:下がりやすい(ドルが強く、ポンドが弱い)材料が多め。ただ、反対に跳ねるきっかけも積み上がっています。
なぜ? イギリスは長い期間の国債の金利が1998年以来の高さになっていて、10/28の予算を前に財政の不安が重くのしかかっているからです。
逆に動くとしたら? 大口の投資家はポンドをかなり多く売っています。FOMC議事録やFRB幹部の講演で「急いで利上げしない」という色が濃くなってドルが売られれば、その売りを手放す動きでポンドが上がるかもしれません。
いつ決まりそう? 10/8未明のFOMC議事録と、来週10/15の英国のGDPです。
EUR/CHF(ユーロフラン)
ひとことで:上がりやすい(ユーロが強く、フランが弱い)材料が多め。ただ先週末は大きく下がっていて、要注意です。
なぜ? ユーロ圏は物価が3.8%まで上がって利上げの話が続いているのに、スイスは金利0%のままだからです。
逆に動くとしたら? 10/2はフランスの財政不安から、安全な通貨のフランが1日で大きく買われました。フランスの問題が長引いたり、中東の緊張が高まったりすると、下がる流れが続くかもしれません。
いつ決まりそう? 10/8のECBの議事要旨と、フランスの財政をめぐるニュースです。
USD/JPY(ドル円)
ひとことで:上がりやすい(ドルが強く、円が弱い)材料が多め。ただ、上にも下にも決め手が少ない1週間になりそうです。
なぜ? アメリカと日本の金利の差は大きいままで、日銀は続けて利上げしにくいと見られているからです。
逆に動くとしたら? アメリカの10月の利上げの見方はすでにしぼんでいます。FOMC議事録でFRBの慎重さが目立てば、ドルが売られて下がるかもしれません。日本の財務相が円安をけん制し続けている点も、上がりにくくしている材料ですね。
いつ決まりそう? 今週は10/8未明のFOMC議事録。本番は来週10/14の米国の物価でしょう。
まとめ
今週は金利を決める会合がなく、先週に比べると静かな1週間になりそうです。山場は10/9(金)夜のカナダの雇用統計で、その前にFOMC議事録やFRB幹部の講演から、アメリカの次の利上げの手がかりを探すことになりそうです。大きな勝負どころは、10/14の米国の物価と、10月末に集まる中央銀行の会合でしょう。
大口の投資家は、ユーロとポンドを3年で見てもかなり多く売っています。ユーロは物価が強いのに先週いちばん売られていて、何かのきっかけで売りを手放す動きが出ると、反対向きに大きく動くこともあります。豪ドルは投機筋とヘッジファンドの見方が真っ二つなので、そこも気にしておきたいところですね。
主な出典
- 米労働統計局:雇用統計(2026年9月分)(公開APIで取得)
- 米財務省:Daily Treasury Par Yield Curve Rates
- Eurostat:ユーロ圏9月の物価(速報)
- ECB:ユーロの参照レート、議事要旨
- FRB:2026年10月の予定、FOMCの日程
- カナダ統計局:公表予定
- 米経済分析局:公表予定
- 豪統計局:Release calendar
- 内閣府:景気ウォッチャー調査の公表予定
- ミシガン大学:Surveys of Consumers
- CFTC:Commitments of Traders
※この記事は公開情報を整理したもので、特定の通貨の売買を勧めるものではありません。最終的な投資判断はご自身でお願いします。

