ScenarioPen でHキー、複数チャートに同時に水平線を引く

ScenarioPen でHキー、複数チャートに同時に水平線を引く アイキャッチ画像 手法とツールの組み合わせ

H4 のチャートを眺めていて、「この価格、何度も反応しているなぁ」と気づく。水平線を1本引く。納得して、エントリーのタイミングを計るために M5 に切り替える——そこに、さっきの線はありません。

仕方なくもう一度引きます。ただ、今度は目視で位置を合わせることになるので、数pips ずれる。上位足で見つけたはずの根拠が、執行足では別の価格になっている。「同じ線のつもりなのに、足ごとに微妙に違う」という、あの気持ち悪さ。

マルチタイムフレームで相場を見る人にとって、これは地味に効いてくる摩擦だと思います。今回紹介する Hキーの水平線 と チャート間同期 の組み合わせは、その摩擦をまるごと消すためのものです。ScenarioPen を2021年に集中開発してから5年間、自分のトレードで使い続けてきた中で、いちばん実戦に効いている組み合わせでもあります(最新版 v1.07.9)。

Hキーの基本:押して、クリックするだけ

操作は2ステップで終わります。

ステップ1、チャート上で H キー を押す。画面に描画モードのラベルが出ます。
ステップ2、引きたい価格をクリックする。その価格に水平線が引かれ、同時に描画モードも抜けます。

ツールバーからアイコンを探す操作はありません。ScenarioPen が持つ10種類の描画ツールは、すべてこの「キー1つで描画モードに入る」思想で統一されています。Tキーのトレンドラインと、指が覚える動きは同じです。

水平線と水平レイ、どちらを使うか

ScenarioPen には横向きのラインが2種類あります。ここは混同しやすいので、先に整理しておきます。

  • 水平線(Hキー):クリックした価格を通り、過去・未来の両方向に伸びる
  • 水平レイ(Sキー):クリック位置から右方向だけに伸びる

判断の基準はシンプルで、「この価格が過去に何回効いてきたかを確かめたい」なら水平線、「ここから先、効くと想定している」だけなら水平レイです。(私は、特にデイトレで1時間足の目立つ高値、安値に引くことが多いです)

今回のテーマである同期とは、水平線のほうが相性が良い場面が多くなります。上位足で「過去に何度も反応している」と確認した水準を、そのまま下位足に持っていきたいからです。

「複数チャートに同時」の正体は、チャート間同期

タイトルにある「複数チャートに同時に引く」は、正確には チャート間同期 という機能によるものです。同じ通貨ペアを表示している別のチャートに、引いた線を自動でコピーしてくれます。

ここでひとつ、先に伝えておかなければならないことがあります。

同期の初期値は「同期しない」です。 以前は「全ての時間足で同期」が初期値でしたが、現在は既定でオフになっています。使うには、プロパティ画面の「チャート間でライン・オブジェクトの同期」から、同期の範囲を明示的に選ぶ必要があります。ここを知らないまま H キーだけ試すと、「同時に引けないじゃないか」となってしまうので、最初に設定してください。

選べるのは4つです。

  • 全ての時間足で同期
  • 下位足へ同期(同じ時間足も含む)
  • 上位足へ同期(同じ時間足も含む)
  • 同じ時間足で同期

私が普段使っているのは「下位足へ同期」です。上位足で環境を認識して、執行足に落とし込むという流れに、そのまま噛み合います。それぞれの使い分けは、マルチチャート同期の回で詳しく書いています。

なお、同期の対象は同じ通貨ペアのチャートだけです。USDJPY で引いた線が EURUSD のチャートに現れることはありません。

なぜ水平線と同期は、特に相性がいいのか

同期はどの描画オブジェクトでも働きますが、水平線には他の線にはない性質があります。

斜めの線は、時間軸が変わると見え方が変わります。同じ角度で引いたつもりでも、M5 と D1 では受ける印象がまるで違う。線そのものは同じでも、意味の伝わり方が少し目減りします。

一方で水平線は、価格そのものです。M5 で見ても D1 で見ても、150.000 は 150.000。時間軸をまたいでも意味が1ミリも劣化しない、たぶん唯一の線だと思います。

だから「多くの参加者が見ている上位足で引いて、執行足である下位足で使う」という流れが、水平線では最も素直に成立します。引き直す必要がないということは、上位足の根拠と執行足の根拠が、完全に同じ数字になるということです。目視で合わせた「だいたい同じ価格」ではなく、文字通り同じ価格。ここが、私がこの組み合わせを手放せない理由です。

もちろん、価格はきっちりその1点で反応するわけではないので、実際はゾーンとして見ています。数pips の誤差が即致命傷になるわけではありません。それでも、根拠の起点が足ごとにブレないことは、シナリオを更新していくうえで効いてきます。ズレを許容するかどうかは自分で決めればいい。ズレるかどうかを毎回気にせずに済むのが、同期の効きどころです。

同期先では、その足のスタイルで表示される

同期されてきた線は、コピー先の時間軸に合わせて線の太さや色が自動で切り替わります。月足から1分足まで、長期足は太く、短期足は細く。

これが効いてくるのは、線が増えてきたときです。M5 のチャートに D1・H4・H1 の水準がすべて乗っている状態でも、どの足で引いた線なのかが見た目で分かる。重みの序列が視覚的に保たれるので、チャートが線だらけになっても判断が濁りません。

Aキーを足すと、「待てる」ようになる

引いた水平線には、アラートを乗せられます。

線をクリックして選択し、A キー(Alert の A です)を押すだけ。もう一度押せば解除されます。判定は2つのモードから選べて、既定の Touch はヒゲ込み(高値・安値)でのタッチ、Cross は確定足の終値がクロスしたときに反応します。通知はポップアップ、音、モバイルへのプッシュ通知、そして Discord にも飛ばせます。

発火するとチャート上に矢印のマーカーが残るので、「どこで反応したか」を後から追えるのも実戦的です。アラートの細かい設定は別記事に譲りますが、水平線を引いたらそのまま A キー、という流れだけ覚えておけば十分だと思います。

実戦での組み立て

私の使い方は、だいたいこの順番です。

D1 と H4 で、何度も反応している水準に H キーで水平線を引きます。同期を「下位足へ」にしてあるので、M15 や M5 にも自動で同期されています。そこに A キーでアラートを乗せて、あとは待つ。

師匠から繰り返し言われてきたのは、未来を当てるのではなく、未来の分岐に備えるということでした。水平線は、その「分岐点」を数字で置いておく作業です。そして同期とアラートは、置いた分岐点を見張り続けてくれる仕組みになります。

剣道でいう 後の先 に近い感覚かもしれません。こちらから仕掛けるのではなく、来たものに正確に反応する。そのために必要なのは、反応すべき場所をあらかじめ全部の足で共有しておくことだと思っています。

使うときの注意点

  • 同期は初期状態でオフ — プロパティ画面で範囲を選ばないと、1つのチャートで完結します。まずここを設定してください。
  • 同期の対象は同じ通貨ペアのみ — 制限に見えますが、別ペアに線が飛んでいかないという安全設計でもあります。
  • MT4 標準ツールで引いた線は、既定では同期対象外 — 対象に含めたい場合は、該当のパラメータを有効にしてください。
  • アラートはオブジェクトの説明欄を使う仕様 — 説明欄に自分でメモを入れていると、A キーでの切替が効きません。アラートを使う線には説明欄を使わないでおくのが安全です。
  • 近い位置に同じ種類の線を並べる場合は注意 — 同じバーの中では1本目のタッチだけが通知されます。2本とも確実に監視したいときは、片方をトレンドラインにするなど種別を分けるか、時間軸をまたいで設定してください。
  • DLL の使用許可が必要 — キー操作の取得に user32.dll を使っているため、MT4 で「DLL の使用を許可する」にチェックを入れておく必要があります。

まとめ

H キー単体は、「水平線が速く引ける」だけの小さな機能です。正直、それだけなら記事1本にするほどのものでもありません。

価値が出るのは、同期と組み合わせた瞬間です。上位足で下した判断が、引き直しを挟まずにそのまま執行足へ降りてくる。線が「毎回引き直す作業」から「足をまたいで共有される根拠」に変わります。

派手さはありませんが、マルチタイムフレームで相場を見ている方には、この変化はかなり大きいはずです。まずは同期の設定を「下位足へ」にして、D1 で1本だけ引いてみてください。M5 に切り替えたときに、その線がちゃんとそこにある。それだけで、次の1本を引く気持ちが少し変わると思います。


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