同じ水平線に、同じようにアラートを付ける。なのに、片方は触れた瞬間に鳴り、もう片方は足が閉じてから鳴ります。
ScenarioPen のアラートには判定モードが2つあって、どちらを選ぶかで通知の意味がまるごと変わります。ところが既定のまま使っていると、そもそも選択肢があること自体が意識されません。
実を言うと、以前の ScenarioPen は Touch モードのほうも終値で判定していました。名前はタッチでも、中身はヒゲを見ていなかったわけです。自分で使っていて「触れたはずなのに鳴らない」と感じる場面が続いたので、途中で高値・安値を見る本当のタッチ判定に作り直しました。すでに使っていた方には挙動が変わる変更でしたが、名前と中身が食い違っているほうが問題だと判断しました。
どちらが優れているという話ではありません。自分が何を知りたいのかを、設定の形で宣言するだけのことです。今回はその2つのモードを、実際の挙動の違いから整理します(最新版 v1.07.9)。
なお、アラートの付け方そのもの(線を選んで A キー)と、通知をどこに届けるかは別記事に書いています。
Touch:触れた瞬間に鳴る
既定はこちらです。
判定に使うのは、いま形成されている足の高値と安値。つまりヒゲが線に触れた時点で反応します。毎ティック見ているので、通知はほぼリアルタイムで届きます。
方向の判定も入っていて、直前の足の終値が線のどちら側にあったかで「下から上へのタッチ」か「上から下へのタッチ」かが決まります。通知文にも、その向きが書かれて届きます。
「その価格に来た」ことを、来た瞬間に知りたい。Touch はそのためのモードです。
Cross:足が閉じてから、終値で判定する
もうひとつが Cross です。
こちらが見るのは、確定した足の終値だけ。ひとつ前の足の終値と、そのさらに前の足の終値が線の反対側にあれば、「そこでクロスが成立した」と判定します。
大事なのは、ヒゲをいっさい見ていないことです。どれだけ長いヒゲが線を突き抜けていても、終値が戻っていれば、Cross は鳴りません。
「その価格を抜けた」ことを、足の形が決まってから知りたい。Cross はそのためのモードです。
違い①:通知までの遅れ
ここからが実際に効いてくる差です。
Cross は「足が閉じたあと」に判定するので、構造上最大で1本分の遅れが出ます。これが時間足によって、体感としてまったく違うものになります。
| 時間足 | Cross で待つ可能性がある時間 |
|---|---|
| M5 | 最大5分 |
| M15 | 最大15分 |
| H1 | 最大1時間 |
| H4 | 最大4時間 |
H4 のチャートで Cross にしていると、価格が抜けてから通知が来るまで数時間空くことがあります。これは不具合ではなく、そういう道具です。足が確定するのを待つと決めた以上、待ち時間は必ず発生します。
逆に M5 の Touch は、触れた瞬間に鳴るので反応は速い。ただし、そのぶん鳴る回数も増えます。
違い②:ヒゲの「だまし」をどう扱うか
もうひとつが、ヒゲ先だけ線を触って戻っていく動きの扱いです。
Touch は鳴ります。Cross は鳴りません。
これは、どちらかがおかしいのではなく、拾いたい情報が違うということです。
「この価格、まだ効いているのかな」を確かめたいときは、ヒゲで触れて戻された事実そのものが知りたい情報になります。むしろ、そこで反発したことにこそ意味がある。この場合は Touch です。
一方で「ここを抜けたら方針を変える」と決めているときは、ヒゲが一瞬越えただけでは判断材料になりません。終値で越えているかどうかを見たい。この場合は Cross です。
だましを拾うか捨てるかが、そのままモードの選択になる、と言い換えてもいいと思います。
ただ、Cross にすれば必ずだましを避けられるわけではありません。終値できれいに抜けてから戻ってくる展開は普通にあります。Cross が濾せるのは「ヒゲだけの越え」であって、それ以上のことは保証しません。
通知の文言も変わる
地味ですが、あとから効いてくる違いです。
Touch で鳴ったときは Touch、Cross で鳴ったときは Break という言葉が通知文に入ります。通知を後から見返したとき、どちらの意味で鳴った通知なのかが判別できるわけです。
チャート上に残る発火マーカーも、付く位置が違います。Touch は触れた今の足に、Cross は判定のもとになった確定足に付きます。後から履歴を追うときに、この差は意外と役に立ちます。
落とし穴:モードはチャート単位で、線ごとには変えられない
ここは知っておかないと混乱します。
判定モードはプロパティ画面の設定です。つまり、そのチャートに引いたすべての線に一律で効きます。「この線は Touch、あの線は Cross」という、線ごとの使い分けはできません。
ただ、この制約には裏側があります。
モードがチャート単位なら、チャートを分ければ使い分けられる。
たとえば H4 のチャートは Cross にしておく。M15 のチャートは Touch にしておく。そのうえで、線はチャート間同期で両方に降ろしておく。
こうすると、同じ1本の線を、2つの意味で同時に見張れます。H4 では「終値で抜けたか」を、M15 では「触れて反応が出たか」を。線を引き直す必要はなく、同期が勝手に揃えてくれます。
制約として受け止めると不便ですが、運用の形として見ると、むしろこちらのほうが実戦的かもしれません。
どちらを選ぶか
判断軸を整理すると、こうなります。
| 知りたいこと | 選ぶモード |
|---|---|
| その価格で反応が出るか(レジサポの効き) | Touch |
| その価格を本当に抜けたか(ブレイク) | Cross |
| 執行足でタイミングを計りたい | Touch |
| 上位足で環境の変化を捉えたい | Cross |
とはいえ、最初から厳密に決める必要はないと思っています。まずは既定の Touch のまま鳴らしてみて、「鳴りすぎる」と感じたら Cross を検討する。その順番のほうが、自分の感覚に合う設定にたどり着きやすいはずです。
どちらのモードも、やっていることは「待って、来たものに反応する」ことです。剣道でいう 後の先 の構えは変わりません。違うのは、何をもって”来た”と見なすかの定義のほうです。
師匠から繰り返し言われてきたのは、未来を当てるのではなく、未来の分岐に備えるということでした。その分岐が成立したと見なす条件を、自分の手で決める。モードの選択とは、つまりそういう作業なのだと思います。
まとめ
Touch は速く、そのかわりヒゲのだましも拾います。Cross は終値で濾せますが、そのぶん遅れます。
優劣ではなく、何を知りたいかの宣言です。そして既定のまま使っているうちは、その宣言をしていないのと同じことになります。
すでにアラートを使っている方は、一度だけでいいので、自分がどちらのモードで鳴らしているかを確認してみてください。そのうえで選び直すと、同じ線から届く通知の意味が変わってくるはずです。
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